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Evidence Level: Low

早食いと空腹時血糖。オッズ比1.16の読み方

昼食を短時間で済ませ、咀嚼回数を増やしても体重が動かず、健診の空腹時血糖も気になっている人へ。早食い研究の数字を、自分の記録にどこまで結びつけてよいか整理します。

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凪本 咲

早食いと空腹時高血糖の関連は、オッズ比1.16でした。咀嚼回数を普段の1.5倍にした試験では、昼食の摂取量が9.5%減っています。一方、これらは血糖値が何mg/dL動くかを示す数字ではありません。毎日記録している咀嚼回数とも、同じ単位では比べられません。

むせる、飲み込みにくい、入れ歯が合わない、歯が欠けている、被せ物が取れたまま、顎が痛む。 ひとつでも当てはまる人は、噛む回数を増やす前に歯科医師または嚥下を診ている医療機関へ相談してください。 この記事は、病院に行かなくてよいという意味ではありません。

この記事でわかること

  • 早食い研究が何を「速さ」として測ったか
  • オッズ比1.16が表している単位
  • SMD 0.45をkcalへ換算できない理由
  • 毎日の咀嚼回数の記録が、研究の測ったものとどこでずれるか

読了目安:約12分(本文約6,100字)

早食いの数字は何を測ったものか

まず、空腹時血糖に近い数字から確認します。29研究、計465,155名をまとめた解析があります。遅く食べる群に対し、速く食べる群の結果は次のとおりでした。

調べた項目速く食べる群のオッズ比95%信頼区間
メタボリックシンドローム1.541.27〜1.86
腹部肥満1.541.37〜1.73
血圧高値1.261.13〜1.40
低HDL1.231.15〜1.31
高TG1.291.18〜1.42
空腹時高血糖1.161.06〜1.27

空腹時高血糖のオッズ比は1.16でした。一覧のなかでは、最も小さい関連です。

ただし、ここでいう「速く食べる」は自己申告です。全研究が質問紙で食べる速さを尋ねていました。咀嚼回数や食事時間を機器で測った結果ではありません。

質問紙には統一された基準もありませんでした。妥当性が確認された質問紙は、29件中16件です。また、29件中16件は日本の研究でした。非アジアの研究は4件に限られています。

研究設計の内訳にも注意が必要です。横断研究20件、コホート研究7件でした。ほかはRCTと症例対照研究が各1件です。

29件中20件は、ある時点の状態を比べた横断研究です。この設計では、時間の前後関係を決められません。速く食べた後に空腹時高血糖へ該当したのか、該当している人が速く食べていたのか、この解析だけでは区別できません。

腹部肥満では、出版バイアスありと判定されています。結果が出た研究ほど公表されやすい可能性への注意です。

資金は中国国家自然科学基金などの公的資金です。著者らは利益相反なしと申告しています。以上がE23で確認できる範囲です。

さらに、研究ごとの「食べる速さ」は同じではありません。次の表では、この記事で扱う四つの曝露を分けています。

根拠実際に変えた、または尋ねたもの測った期間と結果毎日の520回との関係
E23質問紙による自己申告の食べる速さ主に横断研究で代謝関連項目との関連を解析咀嚼回数を測っていない
E24実験的に操作した食べる速さ単回の食事で摂取エネルギーを測定操作法の一部に咀嚼指示はあるが、520回との比較ではない
E25各人の普段の咀嚼回数と、その1.5倍、2倍単回の昼食で摂取量を測定最も近いが、毎日の合計回数や体重は測っていない
E28食事外を含む1日90分以上のガム咀嚼8週間で体重などを測定食事の速さや食事中の咀嚼回数とは別物

1食520回という記録は、四つの曝露のどれとも一致しません。 E25だけは、食事中の咀嚼回数を実際に測っています。それでも、各人の普段の回数に対する倍率が基準です。

したがって、340回から520回への増加だけを見ても、E23の「速い群」から「遅い群」へ移ったとは判断できません。E25の条件を再現したとも判断できません。

早食いに伴う項目を広く確認したい場合は、早食いと肥満の関係。報告されていることの整理で研究ごとの違いを整理しています。

オッズ比とSMDは何の単位か

オッズ比1.16は、血糖値の変化量ではありません。空腹時高血糖に該当する人の割合に関する相対指標です。厳密には、割合から計算する「オッズ」の比を表します。オッズは「該当する人の数 ÷ 該当しない人の数」で、オッズ比はそれを2群で割った値です。

OR=1.16は、血糖値が1.16倍になるという意味ではありません。 何mg/dL上がるか、下がるかも表していません。個人の検査値へ掛ける数字でもありません。

オッズ比から実際の人数差を知るには、基準となる群の該当割合が必要です。E23から個人の血糖値の変化量を取り出すことはできません。

同じ注意は、OR=1.54にも必要です。「体重が1.54倍になる」という意味ではありません。「1.54倍太る」という意味でもありません。

この数字は、該当者の分布を群間で比べたものです。しかも、多くは一時点を比べた横断研究です。個人が食べ方を変えた後の変化量とは異なります。

次に、食べる速さを実験的に変えた研究を見ます。22研究をまとめた解析では、ゆっくり食べた条件の摂取エネルギーが少ない結果でした。

効果量はSMD=0.45でした。95%信頼区間は0.25〜0.65です。p値は0.0001未満と報告されています。

SMD=0.45にも、kcalやgという単位はありません。 研究ごとに異なる測定値の差を、各研究の標準偏差で割ってそろえた数字です。

SMDは、異なる研究を共通のものさしで比べる指標です。慣例上は0.2が小、0.5が中の目安とされます。0.45は、その二つの目安の間にあります。

ただし、0.45をkcalへ換算することはできません。体重のkgへ換算することもできません。「その昼食で何kcal減るか」は、この数字から出ません。

この解析では、操作方法を変えても傾向は一貫していました。咀嚼回数の指示やペース器具などが含まれます。一方で、研究間の異質性は大きいと報告されています。

食事終了時の空腹感には、有意な関連が出ていません。食後3.5時間までの空腹感にも同様でした。「ゆっくり食べると満腹感が上がる」とは読めません。

示されたのは、その食事の摂取量との差です。しかも、すべて実験室で行った単回の食事です。体重の変化を追った研究群ではありません。

この解析の資金は英国Medical Research Councilです。著者1名はネスレ研究センターに所属していました。別の1名はTop Institute Food and Nutrition所属です。

所属があるだけで、結果が無効になるわけではありません。ただし、研究を読む際の情報として明記しておきます。当サイトが確認できたのは抄録と著者所属の範囲です。以上はE24に基づきます。

健診で知りたいのは、何mg/dL動くかでしょう。体重について知りたいのは、何kg動くかでしょう。ORとSMDは、どちらの質問にも答えません。

だからといって、数字に意味がないわけではありません。群どうしの関連や、単回の食事の差は示しています。ただし、個人の変化量へ読み替えることはできません。

摂取量から体重までの切れた鎖

食べ方と体重の間には、複数の段階があります。この記事の根拠が測った範囲を並べると、次のような鎖になります。

段階測定した根拠ここまで言えることここからは言えないこと
食べる速さE23、E24自己申告または実験操作で速さを分けた1食520回との対応
その食事の摂取量E24、E25単回の食事で摂取量に差が出た毎日の摂取量が同じ割合で変わること
継続後の体重E28ガム咀嚼では8週間後の体重差が出なかった食事中の咀嚼回数を増やした結果

最初の接続は、実験で測られています。E24では速さを操作し、その食事の摂取量を比べました。ただし、kcalでまとめた結果ではありません。

E25は、咀嚼回数を直接扱った試験です。成人45名によるランダム化クロスオーバーでした。各人が複数の条件を経験する設計です。

研究者は、まず各人の普段の咀嚼回数を測りました。そのうえで、普段どおり、1.5倍、2倍を比べました。全員へ同じ固定回数を指示したわけではありません。

自由に昼食を食べたとき、1.5倍の条件では摂取量が9.5%減りました。2倍の条件では14.8%減りました。

食事終了時の主観的な食欲には差が出ていません。食後60分までの食欲にも差はありませんでした。摂取量の差と食欲の差は、同じ結果ではありません。

この試験は、摂取量を割合で示しています。ORやSMDより、1食の問いには近い数字です。それでも、単回の昼食だけを調べた結果です。

9.5%や14.8%を毎日の食事へ掛けることはできません。その数字を長期間へ延ばすこともできません。体重への換算も、この試験の測定範囲を超えます。

1食あたり340回から520回という記録だけでは、E25の「普段の1.5倍」と同じか判断できません。食事の内容や、1食ごとの普段の回数が不明だからです。

次の接続は、単回の摂取量から継続後の体重です。ここを同じ条件でつないだ根拠は、この記事が引く研究の範囲では確認できません。

体重を主要アウトカムにしたRCTはE28です。過体重または肥満の成人201名を8週間追いました。介入群102名と対照群99名に分けています。

両群とも栄養冊子を受け取りました。介入群には、1日90分以上のガム咀嚼も加えました。遵守率は95%を超えていました。

intention-to-treat解析では、両群とも体重とBMIにほとんど変化がありませんでした。著者らは減量を促進しなかったと結論づけています。

ウエスト周囲径は介入群内で減少しました。平均 -1.4±5.3 cm でした。群内のp値は0.0128です。

しかし、群間の変化量には有意差がありませんでした。血圧も同じ形の結果です。介入群内の前後差だけでは、介入効果を判断できません。

対照群との間に差があるかを見る必要があります。その群間差が出なかった、という結果です。当サイトが確認できたのは抄録の範囲です。資金源は確認できていません。

ただし、E28はガム咀嚼の試験です。食事中の速さや噛み方を変えた試験ではありません。食事中の咀嚼回数へ結果を広げることはできません。

E25からE28へは、条件が切り替わっています。E25は食事中の咀嚼回数を操作しました。E28は1日90分以上のガム咀嚼を加えました。

したがって、確認できている鎖は途中までです。食べ方から単回の摂取量までは測定されています。同じ介入を続けた後の体重まではつながっていません。

520回へ増やしても体重が動かないことは、E25と食い違う結果とは限りません。E25は体重を測っていないためです。

噛む回数を増やして体重が変わらないときの数字では、このずれを別の角度から整理しています。

明日は普段の1.5倍を1食だけ試す

明日の行動は、一つに絞ります。数えるのは、普段どおりに食べる1食だけです。その日は回数を増やさず、普段どおりに食べます。数えた回数を、その食事における個人の基準にします。

次に同じ食事をする機会に、普段の回数の1.5倍を目安として試します。これはE25が採用した比較方法に合わせた考え方です。

「昼食を12分より長くする」は目標にしません。E25は、食事時間を目標値にした試験ではないからです。E24も、共通の時間目標を示した解析ではありません。

全員に同じ咀嚼回数を当てはめる方法でもありません。普段の回数は、人によって異なります。E25も、各人の普段の回数を基準にしました。

数える目的は、健康状態の変化を予測することではありません。自分の基準を作り、試験の条件へ近づけるためです。この記事が引く範囲では、この記録で血糖や体重が変わるという根拠を確認できていません。

また、1.5倍でつらさが出る場合は続けません。顎の痛みや歯の問題がある場合は、回数を増やす前に歯科医師へ相談してください。

この1食で確認するのは、実行できるかどうかです。体重や血糖への結果を急いで結びつけません。単回の記録を長期の効果へ延長しないためです。

それでも変わらないときは

咀嚼回数を増やしても、体重が動かない場合があります。この記事が引く範囲では、食事中の咀嚼回数と体重をつないだ結果を確認できていません。

体重が動かないことだけを理由に、記録が無意味だったとは判断できません。反対に、記録を続ければ体重が動くとも言えません。

空腹時血糖が境界域という所見は、咀嚼回数の記録だけで扱わないほうが安全です。健診結果を持って、かかりつけ医や内科へ相談してください。

その際は、空腹時血糖の結果に加えて、普段の食事や体重の記録も見せられます。診断や対応は、医療機関で個別に判断されます。

食べること自体がつらくなっている場合も、回数や体重の記録を増やす前に相談してください。記録が負担になっていることも伝えて構いません。

よくある質問

早食いをやめると空腹時血糖は下がりますか?

E23では、速く食べる群と空腹時高血糖の間に、OR=1.16の関連が報告されています。ただし、大半は横断研究です。

食べ方を変えた後に、血糖値が何mg/dL下がるかは測っていません。「早食いをやめれば下がる」とは結論づけられません。

食後の血糖について知りたい場合は、よく噛むと食後血糖値のカーブは緩やかになるのかも確認できます。

よく噛むと体重は何kg減りますか?

この記事が引く範囲では、食事中の咀嚼回数から体重のkgを示す数字を確認できていません。E25は単回の昼食で摂取量を測った試験です。

E28は8週間、体重を測っています。しかし、試したのは1日90分以上のガム咀嚼です。食事中の噛み方へ置き換えることはできません。

1食の咀嚼回数は何回が目安ですか?

E25は、全員共通の固定回数を使っていません。各人の普段の回数を測り、その1.5倍と2倍を比較しました。

そのため、この記事から共通の目標回数は出せません。まず普段どおりの1食を数える方法なら、E25の比較方法に近づけられます。

ただし、毎日の合計回数と健康状態の関係は、この試験では調べられていません。520回という記録だけで良否は判断できません。

まとめ

  • 空腹時高血糖との関連はOR=1.16で、この一覧のなかで最も小さい
  • ORもSMDも、mg/dLやkgやkcalを表す指標ではない
  • 数字が出ているのは単回の食事の摂取量までで、1.5倍では9.5%、2倍では14.8%減っている
  • 体重を主要アウトカムに置いたRCTは8週間、201名のガム咀嚼試験で、群間差は出ていない
  • 明日は普段どおりの1食を数えて、自分の1.5倍という基準を作る

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この記事は情報提供を目的としており、診断や治療の代わりにはなりません。

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