M
Evidence Level: Low

頭皮ストレッチと毛髪。噛むことは関係するか

頭皮を物理的に引っ張ると毛乳頭細胞の遺伝子発現が変わる、という研究があります。何がどこまで確かめられているのか、そして咀嚼がそこに含まれるのかを整理しました。

M

MoguExercise Team

この記事は以前「頭皮への物理的ストレッチが発毛遺伝子を強制起動させることが完全に証明された」と書いていました。さらに、咀嚼で頭皮を引っ張る行為が発毛に結びつく、とも書いていました。どちらも言い過ぎです。2026年8月に書き直しています。

咀嚼と毛髪の関係についてはこちらの記事にまとめました。結論だけ書くと、噛んでいる最中の頭皮血流を測った研究と、咀嚼習慣と毛髪の太さの関連を見た横断調査はありますが、咀嚼が毛髪を改善することを示した研究は確認できませんでした。

ここでは、元になった研究が実際に何を示したのかを書きます。

参照している文献

Integrative and Mechanistic Approach to the Hair Growth Cycle and Hair Loss https://doi.org/10.3390/jcm12030893

これは総説(レビュー)です。 著者らが新しく実験をした報告ではなく、既存の研究をまとめたものです。以前この記事は「臨床・インビトロ研究および包括的総説に基づく」と書いていましたが、実験データの出どころは別の研究です。

実際に確かめられていること

24週間の頭皮マッサージで毛髪が太くなった

E12 は頭皮マッサージの研究です(Koyama T et al. 2016)。健常男性9名に1日4分間、マッサージ機器を側頭部に24週間当ててもらい、毛髪の太さが0.085mmから0.092mmへ増えたと報告されています。

対象は9名です。 独立した対照群はなく、同じ人の反対側の頭皮を無処置の対照としています。24週間で0.007mmという変化幅です。

培養細胞に伸展刺激を与えると遺伝子発現が変わった

同じ研究で、培養したヒト毛乳頭細胞に伸縮の負荷をかけたところ、遺伝子発現に変化が見られました。発毛に関わるとされる遺伝子の発現が上がり、IL-6の発現が下がったと報告されています。

これは培養皿の中の細胞に起きたことです。 遺伝子の発現が変わったことと、頭に毛が生えることの間には距離があります。以前この記事は「DNAを書き換える」と書いていましたが、遺伝子発現の変化はDNAの書き換えではありません。

自己申告のアンケート調査

自己マッサージを続けた人へのアンケート調査があります(English RS Jr, Barazesh JM, Dermatol Ther (Heidelb) 2019)。上のマッサージ機器の研究とは別のものです。ただしこれは後ろ向きのアンケートで、対照群はなく、結果はすべて本人の自己申告です。 案内にアクセスした1899名のうち回答したのは340名(17.9%)で、回答者の68.9%が抜け毛の減少または再成長を報告した、という数字です。回答しなかった人の結果は分かりません(効果を感じなかった人ほど回答しない可能性があります)。著者ら自身、自己申告に依拠している点を限界として挙げています。

これは本人の申告に基づくもので、対照群も客観的な計測もありません。 効果を確かめる根拠としては弱い部類に入ります。以前この記事は、ここから「投入時間と効果に明白な正の相関がある」と書いていました。この設計から相関を結論することはできません。

咀嚼はここに入っていない

以上のどこにも、噛むことは出てきません。

  • マッサージ機器を頭皮に4分間当てた研究
  • 培養細胞を機械で伸展させた実験
  • 自分でマッサージした人へのアンケート

「側頭筋が動けば頭皮が引っ張られるのだから同じことだ」という説明を、以前この記事は載せていました。しかし、咀嚼で頭皮にかかる力を測った研究も、咀嚼を続けて毛髪がどう変わるかを追った研究も見つけられませんでした。

まとめると

  • 頭皮マッサージと毛髪の関係を調べた小規模な研究はある(9名、反対側頭皮を対照)
  • 培養細胞レベルで遺伝子発現が変わることは報告されている
  • 咀嚼が同じ効果を持つという根拠は、確認できなかった
  • 「証明された」と言える段階ではない

薄毛や抜け毛が気になる場合は、皮膚科やAGA・FAGAを扱う医療機関に相談してください。治療については医師の判断が必要です。

このサイトは咀嚼に関する研究を紹介する場所で、医療専門職の監修は受けていません


※この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

この記事の科学的根拠(参考文献)

Integrative and Mechanistic Approach to the Hair Growth Cycle and Hair Loss

Natarelli N, Gahoonia N, Sivamani RK (2023)

Published in: Journal of Clinical Medicine

Reference Summary

毛周期と脱毛の機序をまとめた総説(レビュー)であり、著者ら自身が新たに実験した報告ではない。毛包のある真皮深層への血液供給は、毛髪の成長期における血管新生や細胞分裂に関わるとされる。AGA(男性型脱毛症)にはDHTなどのホルモン要因が関与する。なお、咀嚼や側頭筋の動きについては、この文献では扱われていない。

Science x Habit

正しい咀嚼を、もっと楽しく。

研究で報告されているメリットを、あなたの日常へ。MoguExerciseはあなたの健康的な食習慣をサポートします。