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噛むと頭皮の血流は増えるのか

咀嚼で側頭筋が動けば頭皮の血流が良くなり髪に効く、という話があります。噛んでいる最中の血流を測った研究はありますが、噛み続けて毛髪が変わったかを示した研究はありません。分かっていることと分かっていないことを分けて書きます。

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MoguExercise Team

「よく噛めば側頭筋が動いて頭皮の血流が良くなり、髪に良い」という話があります。

この記事は以前、その説明をそのまま載せていました。2026年8月に書き直しています。 さらにその書き直しでは「咀嚼と頭皮の血流を測った研究は見つからなかった」と書いていましたが、これも誤りでした。 該当する研究は存在します。同日中に再度直しています。

以下、何が確かめられていて、何が確かめられていないのかを書きます。

咀嚼と頭皮血流を測った研究はある

和文誌に発表された、ロッテ中央研究所による研究が2件あります。英語圏のデータベースでは出てきません。

  • ガム咀嚼中の頭皮血流薬理と治療 50(9): 1605-1609, 2022)。健常な男女20名(25〜53歳)で、ガムを噛んでいるときと噛んでいないときの頭皮血流を比較し、頭頂部で44.0%、前頭部で47.1%の上昇が報告されています。論文の題名にある通り**オープン(非盲検)**のランダム化クロスオーバー試験で、被験者も測定者も条件を知っている状態での測定です。
  • ガム咀嚼習慣と毛髪の太さ(アンチ・エイジング医学 17(2), 2021)。ロッテ中央研究所の研究員27名(24〜51歳)を日常のガム咀嚼時間で群分けした横断調査です。咀嚼時間の多い群で頭頂部の毛髪が有意に太く、側頭部では差がありませんでした。

ただし、この2件が示している範囲は限られます。

血流のほうは、噛んでいる最中の一時的な変化です。噛み終えたあとも続くのか、それが毛髪に届くのかは、この試験では分かりません。

毛髪の太さのほうは横断調査です。ガムをよく噛む人とそうでない人を比べただけで、噛む量を変えて追跡したものではありません。対象は同じ研究所の研究員27名で、咀嚼時間の長い人がたまたま他の生活習慣も違う可能性を排除できません。

そしてロッテ自身が、次のように書いています。

本研究はあくまで調査研究であり、ガム咀嚼習慣と毛髪の太さに関る因果関係を証明したものではありません。

ガム咀嚼による毛髪に効果を認めた研究成果はまだ出ていません。

研究を実施した当事者が、毛髪への効果はまだ示せていないと明言しています。

引用していた研究の中身

この記事はもともと3つのエビデンスを根拠に挙げていました。実際の中身は次のとおりです。

E12 は頭皮マッサージの研究で、咀嚼の研究ではない

E12 は頭皮マッサージの研究です(Koyama T et al. 2016)。健常男性9名にマッサージ機器(170rpm)を1日4分間・24週間使ってもらったところ、毛髪の太さが0.085mmから0.092mmに増えたと報告されています。

手で揉んだ研究ではありません。 独立した対照群はありませんが、同じ人の反対側の頭皮を無処置の対照として比較しています。当初この記事は「手でマッサージ」「対照群はありません」と書いていましたが、どちらも不正確でした。

なお、機器を当てたのは側頭部です。側頭筋の話をするうえでは押さえておくべき点になります。

E13 は毛髪生物学の総説で、咀嚼には触れていない

E13 は毛髪の成長サイクルと脱毛の機序を扱った総説です。頭皮の血流が毛母細胞の分裂に関わること、AGAにDHTなどのホルモン要因が関与することが書かれています。

咀嚼や側頭筋については扱われていません。 以前この記事は、ここから「側頭筋のポンプ作用が頭頂部の血流を改善する」という説明を導いていました。文献にその記載はありませんでした。エビデンスページの要約自体が誤っていたため、同時に修正しています。

E11 は査読論文ではない

E11 はガム咀嚼の効果をまとめた解説記事です。独立行政法人農畜産業振興機構の情報誌に掲載されたもので、学術誌の査読を経た論文ではありません。

結局のところ

分かっていることを並べると、次のようになります。

  • 噛んでいる最中、頭皮の血流は上がる(健常男女20名、噛んでいる間の測定)
  • ガムをよく噛む人は頭頂部の毛髪が太い傾向がある(研究員27名の横断調査、因果は不明)
  • 頭皮を機器で動かすと毛髪が太くなったという小規模な報告がある(E12、健常男性9名・24週間・反対側対照)
  • 頭皮の血流は毛髪の成長に関わる(E13)
  • 側頭筋は噛むときに動く筋肉で、こめかみの上あたりに位置する(解剖学的な事実)

並べると咀嚼と髪がつながっているように見えます。それでも足りないのは、噛む量を変えて毛髪がどうなるかを追った研究です。 一時的に血流が上がることと、髪が変わることの間には、まだ確かめられていない距離があります。

髪のことで悩んでいる場合

薄毛や抜け毛には、ホルモン要因、加齢、栄養状態、頭皮の疾患など複数の要因が関わります。噛み方を変えることで解決する問題として扱わないほうがいいです。

気になる場合は皮膚科や、AGA・FAGAを扱う医療機関に相談してください。治療法については医師の判断が必要です。

このサイトは咀嚼に関する研究を紹介する場所で、医療専門職の監修は受けていません。髪に関する判断の根拠にはしないでください。


※この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

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