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Evidence Level:

頭皮の炎症と毛周期。噛むことは関係するか

薄毛には頭皮の炎症や血流が関わると言われます。咀嚼がそこに影響するという説について、引用元にあたって確かめた結果と、確かめられなかったことを書きます。

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MoguExercise Team

「頭皮の炎症が毛周期を狂わせる。噛むことで側頭筋を動かせば血流が改善して炎症も収まる」という説明を見かけることがあります。

この記事は以前、その説明を断定形で載せていました。引用元にあたって確かめたところ、咀嚼が毛髪を改善することを示した研究は見つかりませんでした。2026年8月に書き直しています。

以前この記事が書いていたこと

書いていたのは、おおむね次の内容でした。

頭皮が固くなり血流が低下して酸欠状態になると、防衛反応としてIL-6が大量に分泌される。IL-6は成長期のスイッチを強制的に切り、退行期へと毛母細胞を移行させる死神のシグナルである。

根拠として E12 を挙げていました。

E12 は、健常男性9名にマッサージ機器を24週間使ってもらった研究です。 毛髪が太くなったこと、機械的に伸展させた毛乳頭細胞でIL-6の発現が低下したことが報告されています。

つまり、IL-6が下がったのは培養細胞に物理的な伸展刺激を与えた実験での話です。「頭皮が酸欠になるとIL-6が出る」「IL-6が退行期のスイッチを切る」という因果の順序を、この研究が示したわけではありません。

分かっていること

  • 炎症性サイトカインは毛包の状態に関わりうる(毛髪生物学の一般的な理解)
  • 頭皮をマッサージ機器で動かした小規模な研究で、毛髪が太くなった(E12、健常男性9名・24週間・同じ人の反対側頭皮を対照)
  • 同じ研究で、機械的に伸展させた培養細胞のIL-6発現が低下した

分かっていないこと

  • 噛むことで頭皮の炎症が変わるかどうか。測った研究を見つけられませんでした
  • 咀嚼を続けて毛髪がどう変わるかを追った研究。存在を確認できませんでした

なお、噛んでいる最中に頭皮の血流が上がることを測った研究と、ガム咀嚼習慣と毛髪の太さの関連を見た横断調査は、いずれもロッテ中央研究所から報告されています。詳しくはこちらの記事に書きました。どちらも、噛み続けて毛髪が変わったかを追ったものではありません。

E13 は毛髪生物学の文献ですが、咀嚼や側頭筋については扱っていません。以前この記事は、そこから咀嚼の話を導いていました。引用の誤りです。

この説がどうやってできたか

並べてみると、こういう構造でした。

  1. 頭皮マッサージで毛髪が太くなった(研究あり)
  2. 側頭筋は頭皮に近い場所にあり、噛むと動く(解剖学的事実)
  3. だから噛めば頭皮がマッサージされて毛髪が太くなる(←ここに根拠がない)

3番目が飛躍です。機器で頭皮を4分間動かす刺激と、噛んだときに側頭筋が動く刺激が同じものかどうかは、誰も確かめていません。

髪のことで悩んでいる場合

薄毛や抜け毛にはホルモン要因、加齢、栄養状態、頭皮の疾患など複数の要因が関わります。噛み方で解決する問題として扱わないでください。

皮膚科、またはAGA・FAGAを扱う医療機関に相談するのが確実です。このサイトは咀嚼に関する研究を紹介する場所で、医療専門職の監修は受けていません


※この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

Science x Habit

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