M
Evidence Level: Low

ガムを噛むと学習や運動の成績は上がるのか

中学生を対象にした研究で、ガムを噛む習慣と数学の成績や短距離走のタイムとの関係が報告されています。よく1つの研究として紹介されますが、実際は別々の研究です。どこまでが確かめられているのかを整理しました。

M

MoguExercise Team

この記事は以前、別々の2つの研究を1つの介入研究として紹介していました。2026年8月に書き直しています。

「1カ月ガムを噛んだら、数学のテストも短距離走のタイムも良くなった」という紹介のされ方があります。この記事もそう書いていました。そのような研究はありません。 数学の話と短距離走の話は、別の研究者が、別の対象に、別の期間で行った別々の研究です。

根拠として引かれている資料

E11 は、独立行政法人農畜産業振興機構の情報誌に掲載された解説記事です。

ガムを「噛むこと」によるさまざまな作用 https://www.alic.go.jp/content/001243090.pdf

書いたのは株式会社ロッテ「噛むこと研究部」の菅野範氏で、査読論文ではなく、ガムを製造販売する企業の社員による寄稿です。 利益相反があります。記事の中では複数の研究が紹介されていますが、その多くが著者自身または同社が関わった小規模な非盲検試験です。

2つの研究の中身

咬合力・スタートダッシュ数学スコア
研究菅野ら 2020Johnston et al. 2012
対象女子中学生中学2年生
期間1カ月14週間

この2つは別の研究です。 同じ生徒が数学と短距離走の両方で伸びた、という結果は存在しません。以前この記事は「知覚・認知能力(数学のテストスコア)と、純粋な運動の瞬発力(短距離走のタイム)の双方が、統計的に有意なレベルで向上した」と書いていました。2つの研究を1つに合成した記述でした。

いずれも小規模な介入研究です。ガムを噛む群と噛まない群を長期に追った大規模試験ではありません。

削除した説明

咀嚼が脳幹の網様体賦活系(RAS)を刺激して覚醒水準を引き上げ、それが前頭前野の血流増加を通じて数学のスコアを、運動皮質の興奮性を通じて短距離走のタイムを説明する、という説明を載せていました。削除しました。

引用していた資料に、この経路を測定した記載はありません。脳血流も、運動皮質の興奮性も、覚醒水準も測られていません。もっともらしい生理学の用語を並べて2つの結果をつないでいただけで、根拠がありませんでした。

見出しの「ゼロコストの合法エンハンサー」、本文の「最高のパフォーマンス強化ツール」「副作用のない」も削除しました。他の手段と比較した研究がない以上、最高かどうかは書けません。

結局どう読めばいいか

  • ガムを噛む介入で、短期間に一部の指標が改善したという小規模な報告がある
  • ただし出典は査読論文ではなく、ガムメーカー社員による解説記事である
  • 数学の結果と運動の結果は別々の研究のもので、1つの介入の成果ではない
  • 効果の大きさ、他の要因の影響、長期に続くかどうかは、この資料からは分からない

受験や試合の準備をガムに置き換えられる、という話ではありません。 睡眠、勉強量、練習量のほうが優先されるべき要因です。

このサイトは咀嚼に関する研究を紹介する場所で、医療専門職の監修は受けていません


※この記事は情報提供を目的としたもので、診断や治療の代わりになるものではありません。

この記事の科学的根拠(参考文献)

ガムを「噛むこと」によるさまざまな作用

菅野 範(株式会社ロッテ 噛むこと研究部) (2024)

Published in: 砂糖類・でん粉情報(独立行政法人農畜産業振興機構)/査読論文ではない

Reference Summary

ガムを製造販売する企業の社員による解説記事であり、査読論文ではない(利益相反がある)。紹介されている咬合力・スタートダッシュの報告(菅野ら2020、女子中学生、1カ月)と数学スコアの報告(Johnston et al. 2012、中学2年生、14週間)は、対象も期間も異なる別々の研究であって、同じ生徒で学習と運動の双方が向上したという結果ではない。いずれも小規模な介入研究で、脳血流や覚醒水準は測定されていない。

Science x Habit

正しい咀嚼を、もっと楽しく。

研究で報告されているメリットを、あなたの日常へ。MoguExerciseはあなたの健康的な食習慣をサポートします。