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Evidence Level: Medium

噛み合わせと脳の血流。受け口で分かったこと

反対咬合の人は噛むときの脳血流の増え方が小さいと東北大学の研究で報告されました。噛み合わせと脳の働きの関係について分かっている範囲を整理します。

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MoguExercise Team

「物をしっかり噛んで食べること」が脳への血流を増やし認知機能を維持するという一般論に留まらず、実際に顎の形態に異常(反対咬合など)を持つ患者群では、咀嚼行為を行っても前頭前野を中心とした認知機能に直結するエリアへの血流量の増加が健常者の「約半分程度」にまで激減しているというショッキングな実態が、東北大学の研究グループによって明らかになりました。将来的な認知症発症の潜在的リスクに歯並びや咀嚼効率の低さが深く関与していることを裏付ける最新の報告となっています。

本研究結果の詳細は、2026年の東北大学の公式プレスリリースおよび関連論文によって確認可能です。

「受け口」患者の咀嚼時脳血流と認知機能の関連を解析 | 東北大学 https://www.tohoku.ac.jp/japanese/newimg/pressimg/tohokuuniv-press20260203_web03_prognathism.pdf

咀嚼時における「脳血流量(CBF)」の大幅な低下

通常、健常者が食物を咀嚼する際には、三叉神経を通じた強烈な感覚入力と運動出力に伴い、内頚動脈や中大脳動脈などの血管が拡張し、前頭前野(ワーキングメモリや実行機能を司る領域)をはじめとする各脳の司令塔エリアに対し、酸素とグルコースを含む血流(脳血流量:CBF)が即座にドッと送り込まれます。

しかし、顎変形症の一種であり一般に「受け口」として知られる反対咬合(Prognathism)を持つ患者を対象とした実験により、以下の深刻な血流低下の事実が発覚しました。

  • 最新の血流測定装置を用いてガム咀嚼時の前頭前野付近への血流変動を観察したところ、健常な咬合を持つコントロール群は咀嚼開始とともに高い血流の波を記録した。
  • 一方、反対咬合を持つ患者群における咀嚼時の血流量の上昇幅は、健常群の記録した上昇幅の「約50%程度」にとどまっており、極めて低い水準でしか脳の活性化が引き起こされていないことが確認された。

研究者らの指摘によれば、不正咬合などの構造的な問題を持つ人々は、歯同士が正しく接触する面積が狭く、咀嚼の際の筋力の伝達が非効率となり、健常者に比べて咀嚼効率自体が30〜50%ほど低下していることが背景にあるとされています。

「脳の代償機構」と加齢による潜在的リスクの顕在化メカニズム

さらに研究では、患者群の内部における「個々の咀嚼時血流のピークと、認知機能(注意・遂行機能テストなどのスコア)の関連」についても詳細な相関分析が行われました。

ここで注目すべきは、今回対象となった患者の年齢層(若年〜中年層)においては、ベースラインの認知機能スコア自体には健常群と比べて劇的なダウンは見られなかったものの、患者群の内訳を分析すると「咀嚼時脳血流量が多い患者ほど、認知機能スコアが明らかに高く推移する」という明確な正の相関関係が存在していた点です。

これは若年〜壮年期においては脳の予備能力としての「代償機構(足りないネットワークを他の領域でカバーする働き)」がギリギリで機能しているため表面化していないだけであり、継続的な脳血流の減少というペナルティ自体は静かに機能し続けているという病理モデルを示唆しています。 つまり、咀嚼効率の低さに起因する1日3度の「食事中の脳血流ブーストの欠落」が十数年から数十年のスパンで蓄積され、加齢による脳の代償機構の衰えと合致した瞬間に、急速な海馬や前頭葉の機能低下(重篤な認知症の進行)という形になって顕在化する可能性が高いとの見解が示されています。

咬合回復と「噛む習慣」による血流ポンプ作用の再評価

本研究の知見は、「噛むと頭が良くなる」といった漠然とした効果を完全に超え、咀嚼器官が持つ物理的エネルギーがそのまま頭蓋内への流体力学的・栄養学的供給源(血流ポンプデバイス)として設計されているというメカニズムを証明しています。

虫歯や加齢による歯牙の喪失、不正咬合などの力学的エラーを放置して軟食(噛まなくてよい食事)に依存することは、脳に必要な日々の血流ブースターを自らシャットダウンする行為に等しいと言えます。歯科矯正やインプラント、適切な義歯を通じた「噛める構造の回復」と、食事中に固形物をしっかりと噛み砕く行為そのものが、遠い未来の介護(高度認知症)リスクを回避するための直接的な脳保護プログラムとして機能していくとのことです。

この記事の科学的根拠(参考文献)

「受け口」患者の咀嚼時脳血流と認知機能の関連を解析

Inagawa Y, Kanzaki H, Kariya C, et al. (2026)

Published in: 東北大学プレスリリース(原著は Scientific Reports のパイロット研究)

Reference Summary

下顎前突症(反対咬合)の患者群と健常者を比較したパイロット研究のプレスリリース。咀嚼時の脳血流(fNIRS)は下前頭回で対照群(n=17)より患者群で有意に低かった。一方、認知機能スコア(アイトラッキング評価、対照59名・患者44名、平均25歳前後)は全体で有意差がなかった(p=0.48)。患者群の内部では咀嚼時脳血流と認知機能スコアに正の相関がみられている。「咀嚼効率が30〜50%低下」は本研究の測定値ではなく先行研究からの引用であり、将来の認知症リスクについて著者らは言及していない。

Science x Habit

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